反抗こそが自立への一歩

「母という病」(ポプラ新書)


衝撃的なタイトル。内容も、母との関係にもだえ苦しむ子どもたちのエピソードが、胸にぐさぐさと刺さり、ずしんと重くのしかかり…。


当然、手に取るのもはばかられるような負のオーラを感じる人もいるでしょう。確かに、子育てを担う母は、賞賛される、あるいは認められることはあっても、「病」と分類するなんて。多くの人がぎょっとする内容だと予想されます。


しかし、良くも悪くも、子どもに与える影響が大きいのが母親です。それは父親も、親という点では母親と何ら変わらぬ存在ですが、特に日本は母親が子どもと一緒にいる時間が諸外国に比べて長く、見て見ぬ振りをしているけれど、実は母の存在に悩む人は少なくないのではないかと思います。


著者は精神科医でパーソナリティ障がいの臨床に取り組む第一人者です。精神療法家としても知られ、現代社会が抱える自己愛性や親子関係にまつわる著作を多く出しています。


自身が病んでいると感じる人はもちろん、まったく関係ないという人も、読み進めるうちに、ぐいぐいとその世界へ引き込まれる力強さが本書にはあります。母という病は、最初から暴言や反抗期で見えている人もいれば、子どもの頃は聞き分けの良い子、大人を満足させる優等生を演じて、随分と大人になってから、あぶり出されるような場合もあるからです。


あのヘルマン・ヘッセも、ジョン・レノンも、宮崎駿も、母という病を抱えていたことを知れば、それは単なる病に終わらず、世界を魅了するような創造性を育む力にもなり得ると、多少なりともその意義に納得し、その病の存在を認められるようになりませんか。


子どもが母の手を離れ、言うことを聞かず、暴言を吐けば、「手をかけ、目をかけ、気を配ってきたのに…」と腹も立つでしょう。でもそれは大人になるための、母という安全基地からの巣立ちに向けた、大切な過程なのです。そのためにあがく子どもをどう認め、反抗を受け止めながら、愛情をもって送り出してやれるかは、大人もまた子どもによって成長を促される存在だからこそ成り立つ業です。


真の意味で、受容的な態度というのは、なかなかどうして、そうやすやすとは身につけられるものではありません。子どもが大人に対して暴言や暴力を振るってきても、ただ、ただ認め、受け止められるかと言えば、そんな聖人君子は稀です。「人間らしさ」を求めるほど、そこには感情が伴い、悲しみや怒り、諦め、避難…子どもの反抗に呼応するように、大人にも負の感情が立ち上がるのですから。


しかし、この1冊を通じて、胸に迫る衝撃を受け止め、また自身も親との関係を改めて振り返ることで、子どもが七転八倒しながら進む自立の道へ手を貸してやる一歩を、大人もまた踏み出せるようになるかもしれないと感じた1冊でした。




#子育て #愛着障害 #岡田尊司 #自立への道 


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